エゼキエル書37:1-14(※聖書箇所は末尾に添付します)
預言者エゼキエルは主の霊に連れ出され、 ある景色を見せられました。 谷の真ん中にあったひどい有様の景色でした。そこには、 枯れ果てていた骨が数えられないほどありました。 枯れ果てている骨。動きが無く、沈黙の場所。 死と絶望が支配する世界でした。
エゼキエル書というのは、紀元前600年ごろ、 ユダ王国末期の時代の書物です。 神を礼拝し生きることを目的としたユダ王国。 しかし周辺国家との揺れ動きの中、不安定な国際情勢があった。 同盟、服従、陰謀、策略。その繰り返しの中で、 自分たちが生き残れるかどうか、 その不安の中に神の民は立たされていました。
紀元前597年、ユダ王国の人々は、 ついにバビロンという国に捕囚され、 自分たちの国で生きていくことが許されなくなったのです。 外国に連れていかれ、 外国の文化で生きていくことを余儀なくされた。 エゼキエルもまた、その一人でありました。いつかは帰って、 エルサレムの神殿で神を礼拝したい。 それが唯一の生きる希望と言えるような中、しかし、さらに10年 後、ついにエルサレムは崩壊。 もはや神を礼拝する希望がすべて崩れ去ったような中におかれたの が、 エゼキエルをはじめとする外国に移り住まざるを得なくなった神の 民です。
エゼキエルは枯れ果てていた骨を見ました。その骨というのは、 既に死んでしまった者を見たということも含まれるでしょうが、 それと共にもはや生きる目的や希望を失ってしまって、 ただただ命をつないでいるだけの人のことを指して、 枯れ果てていた骨と言った。
神は預言者エゼキエルに問われます。「人の子よ、 これらの骨は生き返ることができるか。」
エゼキエル自身も枯れ果てていた骨です。 もはや人の目には回復の希望がありません。 絶望の姿しか見えない。そこで神が問われる。「人の子よ、 これらの骨は生き返ることができるか。」
なんと難しい問いでしょうか。
神は私たちのことを分かっていない、 と言い返したくなるような問でもあるかもしれない。
しかしエゼキエルは、もはや答えようもないような問いに対して、 自らの持てる最大限で答えます。「主なる神よ、 あなたのみがご存知です」
外国に連れていかれ、目的がある訳でもなく生活している。
ただ日々の労働に追われ、 命を保つだけで精いっぱいの生活を余儀なくされている。
本当は神を礼拝して生きたい。喜んで生きたい。
でも、どんなに努力をしても、どんなに知恵を使っても、 もうそれは無理なのだ。
絶望としか言いようがない所に私たちは置かれているのだ。
神よ、何か誤ったことをしたのでしょうか。 悔い改めが足りないのでしょうか。自分の信仰も、自分の生活も、 もう保つことができません。私たちは枯れ果ててしまいました。
「人の子よ、これらの骨は生き返ることができるか。」
同じような問いかけを、主イエスもされました。ご自分の弟子、 シモン・ペトロにされました。「ヨハネの子シモン、 あなたはわたしを愛しているか。」(ヨハネ福音書)
枯れ果てており、自分の内には希望がなく、神への愛もなく、 主との生活を忘れ始めている者に向かって、主は問われました。 今日の食べ物のみを求めて、「わたしは漁に行く」 とただ食事のためだけにしか仕事ができなくなってしまったペトロ に対して、問われました。
「あなたはわたしを愛しているか。」
預言者エゼキエルも、主の弟子ペトロも、 そして私たちも一つの答えしかできません。
「主よ、あなたのみが、ご存知です。」「私が生き返るかも、 私があなたを愛するかも、あなたのみがご存知なのです。」
この後、主は枯れ果てていた骨にご自分の霊を与えられました。 骨はカタカタと動き出し、近づき、肉がつき、皮膚が生じました。 一つの体となり、生き返って、自分の足で立つようになりました。
神の霊によって、神の使命に生きるようになりました。 神を知るようになりました。
宗教改革者カルヴァンは、 人生の目的についてこのように言っています。「 人生の目指す目的は何か。それは、 人をお造りになった神を知ることです。神を賛美し、 神を礼拝するために、神を知ることです。 それが人の人生の目的なのです!」
神を知るという使命、目的が私たちの人生にあります。 食事をするためだけに生きている訳ではない。神を知るため、 そして神を礼拝するために生きています。 死と絶望が支配しているように見える世界で、しかしながら、 そこでも神の霊が支配している。神の霊によって、 この使命に私たちもまた生かされている。受難週の一日一日が、 神を知り、主イエスを知る日々でありますよう。祈り願います。
エゼキエル書37:1-14
1 主の手がわたしの上に臨んだ。 わたしは主の霊によって連れ出され、 ある谷の真ん中に降ろされた。そこは骨でいっぱいであった。 2 主はわたしに、その周囲を行き巡らせた。見ると、 谷の上には非常に多くの骨があり、また見ると、 それらは甚だしく枯れていた。 3 そのとき、主はわたしに言われた。「人の子よ、 これらの骨は生き返ることができるか。」わたしは答えた。「 主なる神よ、あなたのみがご存じです。」 4 そこで、主はわたしに言われた。「これらの骨に向かって預言し、 彼らに言いなさい。枯れた骨よ、主の言葉を聞け。 5 これらの骨に向かって、主なる神はこう言われる。見よ、 わたしはお前たちの中に霊を吹き込む。すると、 お前たちは生き返る。 6 わたしは、お前たちの上に筋をおき、肉を付け、皮膚で覆い、 霊を吹き込む。すると、お前たちは生き返る。そして、 お前たちはわたしが主であることを知るようになる。」 7 わたしは命じられたように預言した。わたしが預言していると、 音がした。見よ、カタカタと音を立てて、骨と骨とが近づいた。 8 わたしが見ていると、見よ、それらの骨の上に筋と肉が生じ、 皮膚がその上をすっかり覆った。しかし、その中に霊はなかった。 9 主はわたしに言われた。「霊に預言せよ。人の子よ、 預言して霊に言いなさい。主なる神はこう言われる。霊よ、 四方から吹き来れ。霊よ、 これらの殺されたものの上に吹きつけよ。 そうすれば彼らは生き返る。」 10 わたしは命じられたように預言した。すると、 霊が彼らの中に入り、彼らは生き返って自分の足で立った。 彼らは非常に大きな集団となった。 11 主はわたしに言われた。「人の子よ、 これらの骨はイスラエルの全家である。彼らは言っている。『 我々の骨は枯れた。我々の望みはうせ、我々は滅びる』と。 12 それゆえ、預言して彼らに語りなさい。主なる神はこう言われる。 わたしはお前たちの墓を開く。わが民よ、 わたしはお前たちを墓から引き上げ、 イスラエルの地へ連れて行く。 13 わたしが墓を開いて、お前たちを墓から引き上げるとき、 わが民よ、お前たちはわたしが主であることを知るようになる。 14 また、わたしがお前たちの中に霊を吹き込むと、 お前たちは生きる。わたしはお前たちを自分の土地に住まわせる。 そのとき、お前たちは主であるわたしがこれを語り、 行ったことを知るようになる」と主は言われる。